ビタミンDの威力
ビタミンD3と癌 の関係性についてカリフォルニア大学の研究チームが発表したCancer Causes and Control 誌によると、血清中のビタミンD3値が低い女性では、乳がんの発症リスクが著しく高くなることを報告しています。 ビタミンD3は、癌細胞の増殖に広範囲に関わっています。
- まずはビタミンDとはどんな存在かといいますと
脂溶性ビタミンで、カルシウムとともに骨代謝において重要な役割を果たしていることはご存知かと思います。骨粗鬆症をふせぐためカルシウムを摂取する人は多いですが同時にビタミンDを摂取している方は少ないようです。また、近年の実験研究から、細胞増殖を抑えたり、細胞死を促進したりする作用によって、がんを予防する効果があるのではないかと考えられています。
1980年代よりビタミンDの効能は様々な分野で報告されています。
「骨粗鬆症」、「ほとんどすべてのがん」、「感染症」、「炎症性腸疾患」、「糖尿病」「多発性硬化症」「自己免疫疾患」「アトピー」「関節リウマチ」「花粉症」「慢性疼痛」などなどです。また、難治性の様々な疾患にビタミンD不足が関わっている可能性があるといわれています。
しかし病院ではビタミンDの血中濃度を測る検査をしていない場合が多いのも現状です。
特別にオーダーする必要があり、高額で結果がでるまで時間がかかる場合が多いようです。
ならば検査せずともがんやアトピー、間接リウマチ、花粉症の方は1日1000-2000IUの不活化型のビタミンDを試してみても良いのではないでしょうか。
一般的に過剰症は1日40000IU以上を長期服用した場合で報告されていますがほとんど心配しなくても良いと考えます。
また様々な測定結果から白人より黒人や黄色人種は日光にあたるあたらないに関わらずビタミンD血中濃度は低いです。
血中の不足が心配な人で紫外線にあたる機会の少ない人は、不活化型ビタミンDを食物やサプリなどにて補充する必要があります。
食物でいえば干しシイタケやきくらげが代表ですが魚類やきのこに多く含まれます。
わたくしはコロナ対策のためにサプリメントで1000~2000とっていますが、がんに罹患した時もちょうどコロナ禍でしたのでビタミンDを多く摂っていました。
劇的に治癒したことの中にビタミンDの摂取もあった可能性がありますね。
人を対象としたコホート研究でも、血中ビタミンD濃度が上昇すると、大腸がんや肺がんに罹患するリスクが低下する傾向が観察されてきました。
しかし、大腸がん・肺がん・乳がん・前立腺がん以外のがんや、がん全体を対象としたコホート研究は、まだ十分ではありませんでした。そこで、日本人を対象とした大規模なコホート研究である多目的コホート研究において、血中ビタミンD濃度とがん罹患リスクとの関連が調べる研究もなされています。
被験者は研究目的でがんに罹患する前の血液を提供し、保存しておいた血液のビタミンD血中濃度を測定しました。
その研究では血中ビタミンDの濃度の上昇はがんの罹患リスクと関連していることが明らかになりました。
不活化型ビタミンDというのは、体内で腎臓を含め様々な臓器や免疫細胞で活性酵素から活性型ビタミンDに変換されます。
保険適応の活性型ビタミンDは、それとは違い骨に選択性をもたらしています。骨粗鬆症のために渡されているビタミンDは量的にも数百分の1程度です。
つまり、量的にも全く持って足りない。骨粗鬆症含め、不活化ビタミンDの方が圧倒的に効果的ということです。
ビタミンDと言えば、古臭い骨粗鬆症の薬剤くらいにしか評価されていませんが、多種類のがんや感染症、炎症性腸疾患や1型糖尿病、多発性硬化症などに効果があると言われています。
なぜか20世紀初めの頃の抗生物質が誕生する以前に結核には日光浴が効果的であることがわかっていました。
結核だけではなく日光を浴びれば骨の疾患であるくる病なども治ることがわかっていたことからもビタミンDの驚くべき可能性にきづいていた研究者も存在していたのでしょう。
- ビタミンDの合成経路
ビタミンDは他のビタミンと違い体内で合成することが可能です。
皮膚に紫外線を当てるとコレステロールを原材料にしながら活性型のビタミンDが作られます。
しかし多くの皮膚で合成された不活性型のビタミンDは、食物由来の不活性型のビタミンDとともに血液循環に入って肝臓・腎臓で活性型に変化していく。免疫細胞等でも腎臓と同じ酵素を利用して、活性型ビタミンDを作っています。
ここで注目すべきは、コレステロールと紫外線があれば皮膚で活性型ビタミンDを合成できることです。
がんを抑制するビタミンD
1980年代以降ビタミンDの投与が「がん」の発生を抑えることがわかってきていた。
- マウスにビタミンDを投与すると頭頸部のがんが80%抑えられることがわかっており、前立腺がん、乳がんの動物モデルでも同様のことが得られています。
- ビタミンDの血中濃度が低いと大腸がん、前立腺がん、乳がんの発症が30-50%高くなり、ノルウェーやフィンランドなどの高緯度に住む女性は赤道付近に住む女性に比し卵巣がんの発生が50%高いことが分かっています。
- 1100IUのビタミンDを3年間毎日摂取したネブラスカ州在住の55歳の以上の女性集団はすべのがんの発生率が77%低かったのです。
大腸がん、乳がん、膀胱がん、卵巣がんの発症率はアメリカでは南から北へ行くと2倍に上がることが知られています。
なぜビタミンDに効果があるのか
ビタミンDはほぼすべての組織での遺伝子のスイッチのON とOFFに関与しています。
ビタミンDは遺伝子が収められている核内に入り込み、ある特定のたんぱくと結びつき、さらに別のたんぱくと結びついてDNAの特定の部位に結びつき遺伝子を発令させ、生体内でたんぱくを作らせるのです。
この細胞核に直接作用して特定のたんぱく質を生体内作らせることがビタミンDの生理活性です。
この様に核内の受容体に結びつくものをスーパーファミリーと呼びそれらは生命維持の根源的役割をもちます。
ビタミンDが影響する遺伝子は1000種類を超えると言われています。
代表的なものは骨代謝に関与するものですががんの予防、感染症、炎症を抑えるなど様々なのです。
感染症に関するものでは、体内で抗菌ペプタイドを作る遺伝子の近くにビタミンDの受容体たんぱくがあり、人の細胞にビタミンDを加えるとこの抗菌ペプタイドを作るのも確認されている。
またビタミンDが炎症の際の情報伝達物質である過剰なサイトカインを抑え過剰な炎症を抑えることが確認されています。
ビタミンDと日光照射、食物
食物や日光照射からどれほどとれるかを少し記載しておくとタラ肝油1360IU/大さじ1杯、マグロ、イワシ、サバ、サケなどは200-360IU/85-100g、生シイタケ100IU/100g、干しシイタケ1600IU/100g、卵黄20IU/1個。
そして夏の昼間白人が15-20分間直射日光に暴露されたときは10000IU体内で合成できます。
ここで白人であるとことわっているのは、皮膚が白いほうが紫外線の吸収が良いためです。
色が黒いと吸収率は1/6に低下し黒人の場合ビタミンDの血中濃度は白人の半分にとどまっています。
- 多発性硬化症はビタミンD不足の可能性があります。
ビタミンDは自己免疫疾患にたしても有効の可能性があります。
多発性硬化症は脳や脊髄の神経のミエリン鞘に免疫細胞が攻撃を仕掛けて多彩な神経症状を引きおこします。
この疾患は以前から赤道から離れる地域に発生頻度が高くなることが知られていました。
また季節変動もあり、春に増悪して秋には軽くなる。これは冬の間日照時間が少なく、夏に多いためビタミンD濃度が春に最低になり、秋に最大になることと一致します。
南カルフォルニア大学が79組の一卵性双生児の中で幼いころ屋外でよく遊ぶ子供は外で遊ばない兄弟、姉妹より発症率リスクが57%低かったといいます。
ハーバード大学の公衆衛生大学院のチームは700万人の海軍、陸軍の結成保存サンプルから多発性硬化症を発症したサンプルのビタミンD濃度は低かった。つまり血中濃度が40ng/mlを超える兵士の発症リスクは25ng/ml以下の兵士より62%も低かったのです。
- ビタミンDが影響している臓器
ビタミンDが遺伝子に働き影響していることが証明されている臓器は骨、肝臓、脳、神経細胞、乳房、膵臓、脂肪、副甲状腺、腸、免疫細胞、前立腺、腎臓、皮膚などの全身ほとんどすべてであることが分かっているし、この先の研究で他の部位も働きがわかる可能性があります。
- ビタミンD欠乏を防ぐには
皮膚からの紫外線吸収が最も安価で効率的だけれど日焼け止めクリームを塗ると98%がブロックされます。
日光照射で少し赤みが出る程度に当たらなければならず必要量の紫外線は北米で真夏に10-15時の時間帯に5-15分の全身紫外線暴露が必要です。
この照射は多すぎても意味がないばかりでなく、ビタミンDを壊す物質さえ作ってしまうし、紫外線の他の害もでてくることになるのです。
しかし日光暴露の少ない地域では経口から摂取するビタミンDを増やすしかなく、
どのくらい摂取すべきかは日本での基準は200IU(5μg)で欧米では200-600IU(5-15μg)とかなり差がありますが、ハーバード大学では1000IU(25μg)を推奨しています。
またこの参考文献の著者は毎日4000IU(100μg)を摂取しているなど量に差がありすぎ、日光照射の影響をどのくらいに見積もるかはかなり難しい。
まずは皮膚を日光にあたることを極端に恐れないことが必要です。
それに自分の地域や生活パターンが日光にさらされる機会が少なければ、やはり500-1000IU程度のビタミンDは摂取すべきではないかと考えられます。
感染症、自己免疫疾患、がんなどにすでにかかっていたり、その可能性が高い場合は、ビタミンDの血中濃度を測定して日光照射を増やすことと、日光照射の少ない秋から冬にかけて積極的にビタミンDの摂取を増やすなどの、適切な対応を考えるべきです。
(文章は一部おかりしました)